不具大変―アンバサダー負傷実録―
2008年 04月 12日
兄弟!
去る八日月曜日の午前零時を過ぎた頃、突如として悲鳴が上がった、否、正確には上げ
た。
その夜、地元の駅を降りたらば、風雨が縦横無尽に暴れまわる悪天候。止せば良いのに
弓手に傘、馬手に自転車の操縦桿を取り乍、自らの尻に一鞭加えひひひんと声色を弄した
るは微醺の余徳か、阿房の業か。呵呵。兎に角、一刻も早く濡れた服を脱ぎ一風呂浴びて
飲み直したい。その一念で一心不乱に自転車を走らせたが……。
みんなは歩道の真中に突っ立っている柱をご存知か。あれって多分、歩道に闖入せんと
する原動機付車両を阻止する為の物なのだろうけど、自力動力を以て歩いたり走ったり出
来る暫定税率に左右されっこない環境優等生にとっては邪魔っけ極まりない。最近は起こ
る可きあらゆる可能性に対応すべく護謨製の物が大半……と云うのは財政豊かな都市部
の話。愚生が蟠踞する足立区の植民地が如き寒村は、起る可きあらゆる非経済性を回避
して、一度作ったら中々壊れない真鍮製。公共事業たる物、作られて始まるのと、作って終
わるのとではどちらが納税者をして満足させるか。その答えは佃の大師匠にお尋ねになる
べし。
華も嵐も乗り越えて、もう直ぐ御酒と安心したのもいけなかったのだろう。俄の風玉が手
に持った傘に空気の塊になって体当たりして来た。その衝撃に自転車がふわりとよろけた
瞬間、ペダルを踏み込もうと曲げた膝頭が真鍮製の柱に激突……それが八日の午前零時
過ぎ。
人間の八割以上は水分である。幾ら水が凍って固くなっても、それ以上に固いものとぶ
つかれば容易く割れるというのは道理。哀れなる我が左の膝小僧が泣きっ面、ご憐憫あれ。
翌朝、未だ窓を叩く雨粒の音に目が覚めてベッドから這出し乍、左足が床に着いた瞬間
、火の出る様な激痛で目玉が飛び出そうになった。普段は起きても暫くは曖昧模糊として
いる頭に行き成り半鐘が鳴り響く。その火事場の様な脳裏で膝の不具合を認識してみると、
立てない、歩けない、翻ってみれば痛くて曲げられたものではない。こりゃいけないと思い、
直ぐ近所の外科に行き、患部のレントゲン撮影の後、医師の診断を仰ぐと
「アンバサダーさん、骨は異常ない様ですね。一寸拝見……これ痛いですか、茲は此方
は」
「先生、それ全て過剰に痛いのです。御願いですから触らないで頂きたい」
「おお、失礼しました。こりゃ随分と重い打撲ですな。大体、打った時に出血しなかったで
しょう。それがいけない」
「そんな無理を云われても困ります。幾ら自分の体であっても其処迄加減できますか。
お小水じゃあるまいし」
「あはは、流石はご商売。旨い事を仰る」
「こりゃどうも……なんて冗談云っている場合ではありません。何とかなりませんか」
「なりませんね。何たって膝のお皿の処まで打撲が達していますから……。暫くは動かさ
ない様に」
全治二週間と宣告された割に処方されたのは痛み止めと湿布のみ。あれから四日経
ったがまだ痛い。今日は無理をしてでも自転車に乗ろうと試みたが、膝を一寸曲げた丈で
断念せざるを得なかった。
明日は後輩の結婚式に主席する為に横浜くんだりまで出掛けなければならない。どうせ
なら怪我人は怪我人らしく杖を点き点き式場に行き、日頃先輩を先輩とも思わぬ不躾な後
輩共に尊敬する先輩の看護を杖で指揮し乍、我が武威を挽回しようと思う。
去る八日月曜日の午前零時を過ぎた頃、突如として悲鳴が上がった、否、正確には上げ
た。
その夜、地元の駅を降りたらば、風雨が縦横無尽に暴れまわる悪天候。止せば良いのに
弓手に傘、馬手に自転車の操縦桿を取り乍、自らの尻に一鞭加えひひひんと声色を弄した
るは微醺の余徳か、阿房の業か。呵呵。兎に角、一刻も早く濡れた服を脱ぎ一風呂浴びて
飲み直したい。その一念で一心不乱に自転車を走らせたが……。
みんなは歩道の真中に突っ立っている柱をご存知か。あれって多分、歩道に闖入せんと
する原動機付車両を阻止する為の物なのだろうけど、自力動力を以て歩いたり走ったり出
来る暫定税率に左右されっこない環境優等生にとっては邪魔っけ極まりない。最近は起こ
る可きあらゆる可能性に対応すべく護謨製の物が大半……と云うのは財政豊かな都市部
の話。愚生が蟠踞する足立区の植民地が如き寒村は、起る可きあらゆる非経済性を回避
して、一度作ったら中々壊れない真鍮製。公共事業たる物、作られて始まるのと、作って終
わるのとではどちらが納税者をして満足させるか。その答えは佃の大師匠にお尋ねになる
べし。
華も嵐も乗り越えて、もう直ぐ御酒と安心したのもいけなかったのだろう。俄の風玉が手
に持った傘に空気の塊になって体当たりして来た。その衝撃に自転車がふわりとよろけた
瞬間、ペダルを踏み込もうと曲げた膝頭が真鍮製の柱に激突……それが八日の午前零時
過ぎ。
人間の八割以上は水分である。幾ら水が凍って固くなっても、それ以上に固いものとぶ
つかれば容易く割れるというのは道理。哀れなる我が左の膝小僧が泣きっ面、ご憐憫あれ。
翌朝、未だ窓を叩く雨粒の音に目が覚めてベッドから這出し乍、左足が床に着いた瞬間
、火の出る様な激痛で目玉が飛び出そうになった。普段は起きても暫くは曖昧模糊として
いる頭に行き成り半鐘が鳴り響く。その火事場の様な脳裏で膝の不具合を認識してみると、
立てない、歩けない、翻ってみれば痛くて曲げられたものではない。こりゃいけないと思い、
直ぐ近所の外科に行き、患部のレントゲン撮影の後、医師の診断を仰ぐと
「アンバサダーさん、骨は異常ない様ですね。一寸拝見……これ痛いですか、茲は此方
は」
「先生、それ全て過剰に痛いのです。御願いですから触らないで頂きたい」
「おお、失礼しました。こりゃ随分と重い打撲ですな。大体、打った時に出血しなかったで
しょう。それがいけない」
「そんな無理を云われても困ります。幾ら自分の体であっても其処迄加減できますか。
お小水じゃあるまいし」
「あはは、流石はご商売。旨い事を仰る」
「こりゃどうも……なんて冗談云っている場合ではありません。何とかなりませんか」
「なりませんね。何たって膝のお皿の処まで打撲が達していますから……。暫くは動かさ
ない様に」
全治二週間と宣告された割に処方されたのは痛み止めと湿布のみ。あれから四日経
ったがまだ痛い。今日は無理をしてでも自転車に乗ろうと試みたが、膝を一寸曲げた丈で
断念せざるを得なかった。
明日は後輩の結婚式に主席する為に横浜くんだりまで出掛けなければならない。どうせ
なら怪我人は怪我人らしく杖を点き点き式場に行き、日頃先輩を先輩とも思わぬ不躾な後
輩共に尊敬する先輩の看護を杖で指揮し乍、我が武威を挽回しようと思う。
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▲ by yufuin-brothers | 2008-04-12 01:08 | アンバサダー随感録